8ゲートを手前にして、わが赤ヘル歩兵部隊は、のた打ち回っておりました。
わけの分かっているやつと、わけもわからず騒ぐ奴。
行くか、行かぬか、決断のときです。
管制塔部隊は実はもうのんびりしかかっていたのです。
やることやっているし、上から見ている赤ヘル部隊は、まぁ、かっこいい。
でも、なんだか、動きが変。
立ち止まり、ちと進み、伸び縮み……
♪来るの、来ないの、どうするの
早く精神、決めなさい
決めたら、ビンもって、進みなさぁい
失礼、この歌はけしからん歌だと、批判する向きもおありでしょうが、上から見たとき、気分的にはそういう感じなんだよね。
でもね、本音を言うと、「来なくていい!」でした。わざわざ、逮捕者を出しに来ることはない、というのが、おそらく上にいた連中の多数の気持ちだったでしょう。
でも、そうはいかんのですよね。勢いがついたときというのは。
まして、今日は突撃、空港の中に踊りこんで、逮捕覚悟で徹底的に闘う、というカタァい決意をしてきている部隊だもの。
『1978・3・26 NARITA』から、8ゲートの人々の様子を引用します。
高橋●8ゲートへの進軍中、最初に見えたのは何だったかなぁ?
佐々木●9ゲートから突入した車が燃えた煙だよ。
大森●東峰で燃やした車の煙も見えていた。
大門●警察の阻止線が全部、壊れてしまった。警察同士の連絡もつかない状況に陥っていた。だから闘争本部にいた私たちは、8ゲートまで行けるだろうということは、わかっていた。問題は、8ゲートについたらどうするか。その悩みが大きかったわけです(笑)。吉鶴君のように、昨夜、マンホールに入れなかったような連中がいる。大館君には「管制塔が占拠できたから撤収せよ」と指令するのだけど、「吉鶴たちが引かないといっている」という連絡が入る。
大館●機動隊とぶつかる前に、管制塔に赤旗が翻っているのが見える状況のなかです。
大森●管制塔に向って「やったー! よくやったぞー!」って、みんなが手をふっていた。
吉鶴●僕は管制塔部隊の作戦内容を知っていたから、「ああ、成功したんだ!」って、すぐにわかったけど、8ゲート部隊の圧倒的多数は、なぜ管制塔に赤旗が翻っているのかがわからない。僕は失敗したメンバーとして、手をふりながら管制塔のちかくまで行こうとしたわけ。
大森●僕なんか、「先を越された」と、警察よりもショックを受けたりしてね(笑)。
大門●8ゲートまで行くしかないと思ったのは、われわれのスローガンが「包囲、突入、占拠」だったからです。8ゲートは占拠部隊ではないにしても、突入部隊だと本人たちは自覚していた。そして、さまざまな訓練を積んできた最精鋭だという自負もある。インターの場合、300人と数は多いが、2年間にわたって毎週、機動隊とぶつかってきた部隊だった。
佐々木●この300名は基本的に中隊、小隊として編成されていた。1小隊が10人程度で、5小隊で中隊となる。実際の戦闘ではあまり役に立たなかったけれども、一応はそのように編成されていたわけです。実戦では、小隊長が「突っこめ」という前に突っこんでしまったり、小隊長が1人で突っこんでいったり、バラバラですけどね(笑)。しかし、そのように編成されているのは、全員がコマンドとして自覚しているからです。
大館●希一さんか私だったのかは忘れたけど、プロ青、戦旗派の諸君といっしょにその場でアジったわけです。「管制塔に突入したのはわれわれの部隊である。今後も闘争が続くのだから、機動隊と白兵戦にならなくても、この場から引き返せ」と。本部からの指令で、そのようなアジテーションをしたと思うんです。それが、あとから、ものすごい批判をあびることになった(笑)。
佐々木●トラックの荷台のうしろに立って、そのアジテーションをしたのは僕なんだよ。部隊は、これからどうしたらいいかわからなくて、茫然自失状態。行く気満々の連中だから、「帰るぞ」と言ったって聞く耳を持つはずがない。そこで、言葉を選んで「帰る」とは言わずに、方針提起をした。そうしたら僕のうしろで大館が「行くんだね、行っていいんだね」と無線連絡をしている。
(『1978・3・26 NARITA』より)
あははは……。指揮者はつらいね。
remol