8ゲート前に姿を現した赤ヘルたちは午前中に菱田小学校跡地で、集会に参加していた部隊でした。
彼らは、延々と空港の北東へと樹林にまぎれて迂回路を取り、横堀要塞の裏側を通って、8ゲートへと通じる道へ登場したのでした。
たぶん彼らは10キロ近く、行進してきたことになるでしょう。
彼らが管制塔占拠メンバーと、互いに姿を確かめ合ったとき、まだ、管制塔組は16階管制室への突入路を見つけておりません。
8ゲート部隊のインターの隊長クラスは、14階ベランダの赤旗と人を見て、こんな会話を交わしたといいます。
「おい、俺らの旗がねぇじゃねえか? プロ青と戦旗が占拠したのか?」
「いいや、間違いなくあそこにいるのの半数は我が派だよ。また、旗を忘れたんだろうよ。日韓の時のことを思い出してみろよ」
日韓閣僚会議粉砕闘争ってやつです。
外務省に突入したはいいが、そこにおったてるはずだった南ベトナム解放戦線旗やら槌鎌の素敵な「大漁旗」を、お忘れになったのです。
はい、指揮者はあの原田君だったはずであります。
8ゲート部隊はずいぶん予定の時刻から遅れていました。
戦旗派にご事情がおありだったようです。
準備していたブツを前日(?)にすっかり機動隊にもって行かれてしまったのだそうです。
後に名を挙げる「水野・山下精神」も、木材を鉄ブツに変える力があるはずもなく、時を越える魔法も持ち合わせておりません。
いたしかたのないことでした。
さて、8ゲートの部隊の動きは管制塔の上から見ていても、よくわからんものでした。
申し訳ないが、『1978・3・26 NARITA』を読めば読むほど、笑えます。
語っているのは、8ゲート部隊を率いたインターの大隊長・中隊長。現場ではなく無線で指示を与えていた青年共闘(インター系)の大門、そして、今も称えられるゲバルト勇士、プロ青の大森さんです。
*「今日は引かないで頑張ろう!」*(『1978・3・26 NARITA』より)
佐々木●8ゲートの部隊のなかで、「横堀要塞前から突撃開始して午後1時に8ゲートを突破」ということを知っていたのは、(無線で本部から指揮する)大門と連絡をとっていた大館だけ。だから、大館は焦るわけだよ。
大森●僕たちも急げ、急げと言われたが、時間を教えてもらっていない。現闘だから道は知っているから、これだけの大部隊が、あの細い道を簡単に通れるはずがないこともわかっている。戦旗派の武器が到着しなかったのは、前日に山をガサ入れされて鉄パイプを持っていかれてしまったので、やむをえず角材に変えた。これが部隊と武器とのドッキングが遅れ、角材という10年前のスタイルで戦旗派が登場した理由です。俺たちは前日の警察無線でそのことを知って、戦旗派は明日、どうするのだろうと心配していた。
大門●要塞に籠城していた現闘責任者は、午後1時に3方向から戦闘が始まることを知っていて、チャンスがあれば、できるだけ機動隊を要塞に引きつける作戦行動をとることになっていたのだが、「1時になっても8ゲートに部隊が到着しない。計画変更ですか」という連絡も入ったりした。
佐々木●けっきょく、30分くらい遅れたね。横堀要塞周辺の出発地点に30分遅れで到着したとき、管制塔付近から煙が上がっている。
大森●精華学園でいったん止まって、あの細い道を出た丹波山のところで部隊が勢ぞろいした。私の任務は、「突っこむときに先頭にいればいい」ということで、第1中隊の第1小隊長。京都にいるAとIが、前年の5・8から交互に指揮をとっていたのですが、Aと僕と、インターからは3〜4人が出てきて、「今日は頑張ろう」と丹波山で握手をしたのは覚えています。そのときの意思一致は、「今日は突っこむ」。先鋒隊で言われたのは「今日は引かない」ということだけです。陽動作戦がちょっとでも頭に入っていれば、考え方は変わっていたと思います。
佐々木●陽動作戦といっても、進んでいけばどこかで機動隊の阻止線とぶつかる。そのときは引かない。とことんやりぬく。しかし、それで空港のなかまで行きつけるという想定は、少なくとも僕の頭のなかには全然なかった。
大森●途中にバリケードがいくつもあるのは知っていたから、空港のなかまでいけるとは思っていなかったよね。
佐々木●8ゲートに至る途中で、機動隊と大乱戦になるはずだった。
大館●それをやらないかぎり、管制塔部隊は上までいけない。中隊長クラスまでは、みんな、そう考えていたと思う。
高橋●想定では、8ゲートのはるか手前で白兵戦になるはずだった。ところが行けども行けども白兵戦にならない。どんどん進めてしまう(笑)。
大森●空港を作るための砂利の山が、あちこちにいっぱいあって、そのあいだを行進していった。途中に開けたところもあるが、その場所にはバリケードもなければ機動隊もいない。 (『1978・3・26 NARITA』)
管制塔を占拠され、空港内に置かれた警備本部が解体してしまってから、もう警備どころじゃなくなっていたのです。どこにどう部隊を配置するのか、どう動かすのか、機動隊の側はやりようがなく大混乱に陥っていたのでした。
ま、やりたい放題になるわな。
remol